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クリーンエネルギー中心の経済社会・産業構造への転換は、オイルショック時以来の大転換であり、大規模な政府支援が必要となり、官民挙げて取組みを加速化する必要があります。
そのために現在、「GX経済移行債」の発行が検討されています。
1.なぜ10年間で約150兆円が必要なのか?【クリーンエネルギー戦略】
クリーンエネルギー戦略内の以下の表では、GXを成し遂げるには、
電源脱炭素化・燃料転換に年間約5兆円、製造工程の脱炭素化等に年間約2兆円、エンドユースに年間約4兆円、インフラ整備に年間約4兆円、研究開発等に年間約2兆円が必要であると記載されています。
脱炭素に関連する投資額を、それぞれ一定の仮定のもとで積み上げた場合、2030年において単年で約17兆円が最低限必要となるとしています。
結果、GXへの投資額が10年間で約150兆円が必要であると結論づけられました。
2.10年間で約150兆円を調達する手段【「経済財政運営と改革の基本方針2022 新しい資本主義へ~課題解決を成長のエンジンに変え、持続可能な経済を実現~」(骨太方針2022)】
令和4年6月7日に閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針2022 新しい資本主義へ~課題解決を成長のエンジンに変え、持続可能な経済を実現~」(骨太方針2022)では、GXの達成に向けた方法が2つ記載されています。
①「成長志向型カーボンプライシング構想」を具体化し、最大限活用する
②「規制・支援一体型の投資促進策」(省エネ法などの規制の適正化)
このうち、「成長志向型カーボンプライシング構想」には、排出枠取引、炭素税の概念が入っていましたが、今回の閣議決定で、新たに「GX経済移行債(仮称)」という概念が加わりました。
「経済財政運営と改革の基本方針2022 新しい資本主義へ〜課題解決を成長のエンジンに変え、持続可能な経済を実現〜」(骨太方針2022)では、「GX経済移行債(仮称)」について以下のように記載されています。
10年間で150 兆円超の官民の投資を先導するために十分な規模の政府資金を、 将来の財源の裏付けをもった「GX経済移行債(仮称)」により先行して調達し、複数年度にわたり予見可能な形で、速やかに投資支援に回していくことと一体で検討していく。 |
まだまだ議論が必要な排出枠取引や炭素税などのカーボンプライシングを導入するまでの移行期間に、政府の脱炭素政策の投資を促すものとして、「GX経済移行債(仮称)」が考えられているようです。
「GX経済移行債」は、多くの国で既に発行されているグリーン国債と同様なものとなり、復興債と同様に一般会計ではなく特会を使って発行されることが予想されています。
3.そもそもグリーンボンドとは
グリーンボンドとは、企業や地方自治体等が、気候変動対策や再生可能エネルギーなど、環境分野への取り組みに要する資金を調達するために発行する債券のことです。
グリーンボンドを発行すると、集めた資金は必ずグリーンプロジェクトに利用しなければなりません。
グリーンボンドでは、以下のようなものを原資として償還を行っています。
● 発行体全体のキャッシュフロー
● 調達資金の充当対象となる公的なグリーンプロジェクトのキャッシュフローや、当該充当対象に係る公共施設の利用料、特別税等
● 調達資金の充当対象となる単一又は複数のグリーンプロジェクトのキャッシュフロー
● グリーンプロジェクトに係る通常複数の資産(融資債権、リース債権、信託受益権等を含む。)を担保とし、これらの資産から生まれるキャッシュフローを原資とする
このうち、「GX経済移行債(仮称)」は、国債を発行する仕組みです。
日本の債務残高は毎年の財政赤字が積み上がっている中で、集めた資金が効果的にGXに活かされるのかに注目が集まっています。