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コラム

コストダウン
「電力難民企業」1万件超え?スポット市場の高騰による影響を解説します。

ロシアのウクライナ侵攻などによる日本卸電力取引所(JEPX)スポット市場の高騰を受けて、自ら発電所を持たない新電力が相次いで小売り電気事業から撤退しています。

そのため、電力会社との契約ができない「電力難民企業」が続出しています。

本日はその原因について解説します!

1.エネルギー分野における対露制裁措置

ウクライナ情勢を受け、資源大国であるロシアに対して、2022年3月以降エネルギー分野の制裁措置がとられています。

EUの対露制裁措置
3月9日:ロシアへのエネルギー依存削減策を発表(RePowerEU計画の概要提案)
ガス供給源の多角化や再エネ由来水素の活用等により、以下を目指す。
①本年中にEUのロシア産ガス輸入量を3分の2に削減
②2030年より前にロシアへの化石燃料依存から脱却
 
3月11日:可能な限り早期に、ロシアのガス、石油、石炭への依存をフェーズアウトすることに合意。(非公式の首脳会合)
 
3月15日:ロシアへのエネルギー産業への投資、エネルギー産業に必要な物品や技術等の輸出の原則禁止。
 
4月7日:ロシア産石炭の輸入停止に合意
アメリカの対露制裁措置
• ロシア産石油、石油製品、LNG、石炭等の米国への輸入禁止。
• 人・企業によるロシアのエネルギー分野への新規投資禁止。
G7首脳共同声明(対露制裁措置)
4月7日
• 石炭輸入のフェーズアウトや禁止を含む、エネルギー面でのロシア依存低減するための計画
• ロシアの石油への依存低減するための取組を速やかに進める。

これらを受けて、世界的にLNGのスポット価格が高騰しています。

引用元:資源エネルギー庁 今冬・今夏の需給・市場の見通しについて

特にヨーロッパでは、3月に日平均で90円/kWhを記録し、スポット市場の価格の高騰が続いています。

引用元:資源エネルギー庁 今冬・今夏の需給・市場の見通しについて

2.日本のスポット市場の高騰

日本のスポット市場の価格についても、下記のグラフのように上昇しています。

18.5円/kWh(11月)→17.3円/kWh(12月)→21.9円/kWh(1月)→20.6円/kWh(2月)→26.2円/kWh(3月)→17.8円/kWh(4月)→16.9円/kWh(5月) →17.7円/kWh(6月)

引用元:資源エネルギー庁 今冬・今夏の需給・市場の見通しについて

電力会社は、調達コストが上昇し続け、これまでの電気料金水準での供給が難しくなっています。

3.電源を持たない新電力

帝国データバンクによると、去年4月時点で国に登録されていた新電力は706社で、このうち、今年3月までの昨年度一年間に14社が倒産、2016年に小売りの自由化が行われて以来最も多くなりました。そのほかにも17社が廃業や撤退を決めています。

新電力の多くは、自ら発電機能をもっていないため、大手電力会社やその他の発電事業者から相対契約で電気を購入するか、または、大手電力会社や独立発電事業者などが電気を供給する卸電力取引所を通じて電気を購入し、それを販売しています。

そのため、新電力にとって日本卸電力取引所の取引価格の値上がりは電気の調達コストの上昇に直結します。

この状況で顧客に従来の料金プランで電気を販売すれば赤字になってしまうことから、新規の契約の停止、事業からの撤退、あるいは経営破綻が増えています。

4.「電力難民企業」

新電力の経営破綻や新規契約の停止を受けて、電力契約ができない企業が急増しています。

そして、どことも契約できない「電力難民」が、最終保障供給に殺到しています。

5.最終保障供給とは

最終保障供給とは、

  • 小売電気事業者の事業撤退・倒産により契約切替えを余儀なくされた場合、
  • 料金不払いにより小売電気事業者との契約を解約された場合

など、緊急措置として電気の供給を受けられる制度のことです。

対象は、高圧や特別高圧の需要家となります。

現行の最終保障供給約款においては、みなし小売電気事業者が設定している標準的な料金メニューの約2割増しの料金が設定されています。

平常時においては、最終保障供給料金が市場価格よりも相当割高となるため、長期間契約する需要家は想定されてはいませんでした。

しかし、今の燃料価格高騰下において、電力会社が電力調達コストを料金に反映しようとする結果、一部の電力料金が最終保障供給料金よりも割高となり、需要家が価格の低い最終保障供給料金を選択するという事象が起こっています。

6.最終保障供給の申し込み状況

引用元:「最終保障供給料金の在り方について

新電力が相次いで倒産していることもあり、

上記のように、2022年5月20日時点で約1万3000件と4月から5月にかけてさらに増加している状況です。

7.まだまだ上がる電気代の対策方法とは?

今後も電気料金の上昇が見込まれる中、コストアップを防ぐには、電力会社からなるべく「電気を買わない」ということが、賢い選択となります。

具体的には、

  1. 省エネを進める
  2. 自家消費型太陽光を導入し、発電した電気を自ら使用する

ということになります。

省エネ、自家消費型太陽光に興味のある方はお気軽にお問い合わせください。

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