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今回はIPCC 第57回総会について解説させていただきます。
1.IPCCとは
IPCC(Intergovernmental Panel on Climate Change)とは気候変動に関する政府間パネルの略称です。
PCCは1988年に世界気象機関(WMO)と国連環境計画(UNEP)によって設立された組織であり、事務局をスイスのジュネーブに構え、2022年11月時点で195か国が加盟しています。
組織の目標は各国政府の気候変動に関する制作に対して科学的な基礎を与えることです。
世界中の科学者の協力の下、出版された文献や論文等に基づいて定期的に報告書を作成しています。
また気候変動に関する最新の科学的知見の評価を提供しています。
IPCCは3つの作業部会と緊急性の高い問題の解決を行う1つのタスクフォースで構成されています。
引用:気象庁 気候変動に関する政府間パネル(IPCC)https://www.data.jma.go.jp/cpdinfo/ipcc/index.html
それぞれの役割は以下のようになっています。
・WG1: 気候システム及び気候変動の自然科学的根拠についての評価
・WG2: 気候変動に対する社会経済及び自然システムの脆弱性、気候変動がもたらす好影響・悪影響、並びに気候変動への適応のオプションについての評価
・WG3: 温室効果ガスの排出削減など気候変動の緩和のオプションについての評価
・TFI: 温室効果ガスの国別排出目録作成手法の策定、普及および改定
2.IPCCの報告書
IPCCでは出版された論文や文献などのデータを基に世界中の科学者が取りまとめ報告書を作成しています。
IPCCの報告書には大きく3つの種類があります。
・評価報告書
数年ごとに3つの作業部がそれぞれの分野ごとに報告書を作成し、それらを統合した報告書。
・特別報告書
気候変動に関して特定の問題に特化した報告書。
・方法論報告書
TFIが温室効果ガス排出量と吸収量の算定方法を提示する報告書。
評価報告書についてより詳しく見ていきましょう。
1990年の第1次報告書をはじめに、これまでに5つの報告書が作成されました。
公表年とWG1の作業報告である人間活動が及ぼす気候変動への影響についての評価は以下のようになっています。
報告書 | 公表年 | 人間活動が及ぼす気候変動への影響 |
第1次報告書 | 1990年 | 「気温上昇を生じさせるだろう」 人為起源の温室効果ガスは気候変化を生じさせる恐れがある。 |
第2次報告書 | 1995年 | 「影響が全地球の気候に表れている」 識別可能な人為的影響が全球の気候に表れている。 |
第3次報告書 | 2001年 | 「可能性が高い」(66%以上) 過去50年に観測された気候変動の大部分は、温室効果ガスの濃度の増加によるものだった可能性が高い。 |
第4次報告書 | 2007年 | 「可能性が非常に高い」(90%以上) 気候変動には疑う余地がない。20世紀半ば以降の気候変動のほとんどは、人為起源の温室効果ガス濃度の増加による可能性が非常に高い。 |
第5次報告書 | 2013年~2014年 | 「可能性が極めて高い」(95%以上) 気候変動には疑う余地がない。20世紀半ば以降の気候変動の主な要因は、人間の影響の可能性が極めて高い。 |
第6次報告書 | 2021年 | 人間の影響が大気、海洋および陸域を気候変動させてきたことには疑う余地がない。広範囲にわたる急速な変化が、大気、海洋、雪氷圏および生物圏に起きている。 |
参考:環境省 https://www.env.go.jp/earth/ipcc/5th/pdf/ar5_wg1_overview_presentation.pdf
人と気候変動の因果関係について、1990年に公表された第1次報告書時点では「人為起源の温室効果ガスは気候変化を生じさせる恐れがある」とされていましたが、
2021年に公表されたWG1 による第6次報告書では「人間の影響が大気、海洋および陸域を気候変動させてきたことには疑う余地がない。広範囲にわたる急速な変化が、大気、海洋、雪氷圏および生物圏に起きている」と人間による活動が気候に大きな影響を与えていることは間違いないとされました。
2022年11月時点ではそれぞれの作業部の第6次報告書が公表され、2023年度にそれらを取りまとめたものを正式に第6次報告書として承認する予定です。
3.気候変動シナリオと環境への影響
IPCC第5次報告書では、世界の平均気温の変化の予測を以下のように立てています。
出典元:IPCC WG1 AR5/AR4
RCP2.6シナリオでは、21世紀末の世界の平均気温が、工業化以前と比べて0.9~2.3℃上昇する可能性が高いものです。
RCP8.5シナリオでは、21世紀末の世界の平均気温が、工業化以前と比べて3.2~5.4℃上昇する可能性が高いものです。
気温が3度上昇すると、次のような影響が出るといわれています。
水 | 湿潤熱帯地域と高緯度地域における水利用可能量の増加 数億人の人々が水ストレスの増加に直面 |
生態系 | 最大30%の種の絶滅、広範囲にわたるサンゴの絶滅 種の分布範囲の移動および森林火災のリスクが高まる |
食料 | 小規模農家、自給農業者、漁業者への複合的で局所的な負の影響 低緯度地域における穀物生産の低下傾向 |
沿岸域 | 洪水および暴風雨による被害の増加 |
健康 | 熱波、洪水、干ばつによる罹患率および死亡率の増加 いくつかの感染症媒介動物の分布変化 |
4.第57回総会での主な決定事項
IPCCの第57回の総会が2022年9月27日から10月1日にかけてスイスのジュネーブにて開催されました。
今回の総会では第7次評価プロセスの基本的な枠組みについて決められました。
①IPCCの体制及び運営
第7次評価報告書の作成に関して、現在と同様にWG1、WG2、WG3の3つの作業部会とインベントリータスクフォースという組織構成を継続していくことが決まりました。
またIPCC議長団(IPCC議長、副議長、各WG及びTFIの共同議長等)の地域ごとの選出枠について議長団の人数を第6次評価プロセスと同様の34名とすることも決まりました。
②報告書の頻度及びスケジュール
第7次報告書は第6次報告書と同様に5~7年の期間で作成されます。
5.今後の予定
2023年3月13日から同年3月17日に開催予定の第58回総会では、第6次評価報告書統合報告書の承認・採択が行われ、同年7月に開催予定の第59回総会では、次期議長団のメンバーを決める選挙が行われる予定です。
気候変動の問題に対して信頼性の高いデータを公表しており世界に大きな影響をもたらしています。
IPCCの動向をチェックすることで日本の脱炭素への問題への取り組みを予想することができます。
中小企業においても脱炭素への取り組みが求められています。
電気代の削減や企業価値の向上のために太陽光発電の導入を検討してみてはいかがでしょうか。
最後までお読みいただきありがとうございました。