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1.炭素税とは
炭素税とは地球温暖化に関わる環境破壊や資源の枯渇に対処するための税金の一種です。
二酸化炭素の排出を伴う石炭や石油、天然ガス等の化石燃料や電気の使用によって企業や個人に課せられます。
炭素税を説明するにあたって「カーボンプライシング」という概念が重要となります。
「カーボンプライシング」は日本語で「炭素の価格付け」とも呼ばれ、二酸化炭素を排出した企業や家庭がコストを負担するという温暖化に対する仕組みです。
2021年4月、菅前首相は2030年の温室効果ガスの排出を13年度比で46%削減することを目標としました。
化石燃料の使用に伴う二酸化炭素に価格を付けて税金を課すことによって、環境資源の無駄な浪費を抑え、二酸化炭素の排出量の削減ができることから日本でも注目が集まっています。
炭素税はカーボンプライシングの代表的な制度の一つとなっています。
1990年にフィンランドとポーランドで導入したことをきっかけに欧米諸国を中心に導入が進んでいます。
既に世界では35の国と地域で炭素税が導入されています。
例えばスウェーデンでは二酸化炭素の排出1トンあたり約15,000円、フィンランドでは約8,000円の炭素価格が付けられています。
日本では2012年に炭素税と同様に化石燃料の使用による二酸化炭素の排出に課税する「地球温暖化対策税」が導入されましたが、1トンあたり289円と日本とスウェーデンでは約51倍もの差があり、日本は欧州に比べて低い水準にあります。
パリ協定にて全世界で2050年までに脱炭素社会を実現することを目指すことが決まりました。
脱炭素化に関して国際通貨基金(IMF)は報告書「財務モニター」にてCO2の排出緩和戦略の中で炭素税が最も強力で効率的であると主張しています。
なぜなら企業や個人がエネルギーの消費量を抑え、コストが最小になる方法を自ら見出すことに積極的になるからです。
そのため現時点で日本と欧州で税率に大きな差がありますが、日本も2030年の温室効果ガスの排出を13年度比で46%削減することを目標としているため、炭素税を将来的に欧州と同等の水準の税額にすることで脱炭素化を図ることが予想されます。
財務モニター(国際通貨基金)
https://www.imf.org/ja/Publications/FM/Issues/2019/09/12/fiscal-monitor-october-2019
2.炭素税のメリットとデメリット
炭素税を導入することによるメリットは大きく3つあります。
①価格インセンティブ効果
先述の通り炭素税は温室効果ガスの排出や化石燃料の消費に対して課税する仕組みとなっています。
そこで企業や家庭が設備や機器の交換を行う際に温室効果ガスの排出が少ないものを積極的に取り入れることを促すこと、そして化石燃料の使用やそれに伴う温室効果ガスの排出を控えるように促すことができます。
さらに、人々が温室効果ガスの排出が少ないものを選ぶことにより企業は省エネに力を入れた商品を開発するので、省エネ技術の研究開発を促すインセンティブ効果があります。
②財源効果
炭素税によって得た税収を他の温暖化対策の財源として利用すれば更に排出量の削減をする可能性があるという財源効果があります。
③アナウンスメント効果
人々の税金への関心は非常に高いです。
炭素税が導入されれば社会的に大きな話題となります。
そのため、多くの人々は化石燃料の使用を抑制するべきだという考えが広がります。
人々の購買行動に地球温暖化に対する考えが一つの判断材料として組み込まれるメリットがあります。
一方でデメリットもあります。
①収入の少ない人の負担が大きくなる
炭素税は消費税のように国民の誰もが負担する税金となります。
収入の多い人であろうと少ない人であろうと一律に同じ税率が課せられます。
そのため収入に対して支払う税金の割合が、収入の少ない人の方が大きくなるため負担が大きくなります。
②特定の産業に影響を与える
製造業などを中心に二酸化炭素の排出量が多い企業は炭素税の導入によって経費が大きくなってしまいます。
温室効果ガスの排出を抑制した機器を使用することで一定の対策はできますが、例えば製造業であればその業界の性質上一定以上の削減が難しい場合もあります。
また、人々の使う製品も二酸化炭素の排出を伴わない製品が増えていくことになります。
炭素税を導入することによって今まで二酸化炭素の排出を伴った製品やその産業が衰退する可能性もあります。
3.炭素税導入に対しての企業の対策
世界で脱炭素化に向けた取り組みは加速しています。
特に大企業は国内外から脱炭素化を強く求められます。
大企業は自社で化石燃料や電気の使用による直接的な排出のみならず、ステークホルダーが排出する二酸化炭素についても脱炭素化を図ることを迫られます。
取引する企業の選定基準として、その企業が脱炭素化に積極的に取り組んでいるのかが一つの指標として組み込まれます。
つまり大企業と関わりを持つ中小企業においても脱炭素化は他人事ではないのです。
中小企業も脱炭素に対応できなければサプライチェーンから外されます。
このような動きが世界的な潮流になっています。
これまで、製品は価格や品質で評価されていましたが、これからはCO2排出という新しい評価基準が加わります。
最後に、企業が脱炭素に向けて取り組むべきことは「再生可能エネルギーの導入」です。
また、再エネ導入のなかで一番のオススメは太陽光発電の導入です。
脱炭素化による企業価値の向上や電気代削減のために、省エネ設備、太陽光発電の導入を検討してみてはいかがでしょうか。
最後までお読みいただきありがとうございました。