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2050年カーボンニュートラルの達成に向けて、環境省は2030年までに地域での再エネ倍増に向けた取り組みなどにより、次々と脱炭素を実現する「脱炭素ドミノ」を生み出すことを掲げています。
本日は、地域での脱炭素の取り組みについてお伝えいたします。
1.地域脱炭素ロードマップで示す2025年までのイメージ
政府は2050年カーボンニュートラルという目標達成に向けて様々な政策を行っており、「地域脱炭素ロードマップ」はそのうちの一つになります。
「地域脱炭素ロードマップ」では、地域脱炭素が意欲と実現可能性が高いところからその他の全国の地域に広がっていく「実行の脱炭素ドミノ」を起こすべく、今後5年間を集中期間として施策を総動員するとされました。
地域脱炭素ロードマップは上記の概要のように、2025年に向けての中間ポイントを示しています。
2025年までに行うことのうちの一つは「先行モデルケース」づくりです。
例えば、
・公共施設の省エネ向上・再エネ100%
・温室効果ガスを排出しない公共交通整備
・小規模街区で再エネ・省エネ・蓄エネを活用し、IoTを用いて管理する
などがあります。
2.脱炭素先行地域について
上記のような「先行モデルケース」である、脱炭素先行地域については、2025年度までに少なくとも100か所を選定することを予定しており、年2回程度の募集を予定しています。
地域脱炭素の選定要件は以下となっています。
● 2030年度までに、脱炭素先行地域内の民生部門(家庭部門及び業務その他部門)の電力消費に 伴うCO2排出の実質ゼロを実現すること ● 地域特性に応じた温暖化対策の取組(民生部門の電力以外のエネルギー消費に伴うCO2やCO2以 外の温室効果ガスの排出、民生部門以外の地域と暮らしに密接に関わる自動車・交通、農林水 産業等の分野の温室効果ガスの排出等についても、地球温暖化対策計画と整合する形で地域特 性に応じ少なくとも1つ以上の取組を実施する計画となっていること) ● 再エネポテンシャル等を踏まえた再エネ設備の最大限の導入 ● 脱炭素の取組に伴う地域課題の解決や住民の暮らしの質の向上 ● 脱炭素先行地域の範囲・規模の特定 ● 計画の実現可能性(計画の具体性、関係者の調整方針等) ● 取組の進捗管理の実施方針及び体制 ● 改正地球温暖化対策推進法に基づく実行計画の策定等 |
「2030年度までに、脱炭素先行地域内の民生部門(家庭部門及び業務その他部門)の電力消費に伴うCO2排出の実質ゼロを実現すること」の評価事項の一つには、地方自治体で発電する再エネ電力量の割合を、可能な限り高くすることがあります。
※再エネの電力量は、自家消費・相対契約・再エネ等電力証書の活用で評価されます。
第3回募集以降は若干の変更点が加えられました。
この変更によって各事業会社との連携や、実現効果が高い提案が優先的に選定されるようになりました。
■民間事業者等の共同提案の要件化
脱炭素事業は地方公共団体だけで取り組むことはできず、民間事業者等との連携が不可欠であることから、第3回の公募から、提案の実現可能性を高めるため、民間事業者等との共同提案を必須とする。
■「重点選定モデル」の創設
地域特性に応じた地方創生やまちづくりにも資する多様な脱炭素化モデルを創出するため、①関係省庁と連携した施策間連携、②複数の地方公共団体が連携した地域間連携、③地域版GXに貢献する取組、④民生部門電力以外の温室効果ガス削減に貢献する取組を「重点選定モデル」として募集し、要件に該当する優れた提案を優先的に選定する。
3.地域脱炭素移行・再エネ推進交付金
地域脱炭素先行地域や地域脱炭素ロードマップに基づく重点対策を先進的に実施している地方公共団体に対し、「地域脱炭素移行・再エネ推進交付金」が出されています。
ここでは、2025年までに地域特性に応じた取組の実施に道筋を立て、2030年度までに実行することが求められています。
4.脱炭素先行地域が選定されました
脱炭素先行地域は2023年9月時点で第3回まで結果が公表されています。
その結果、第3回までに32道府県83市町村の62提案が選定されました。
新潟県の場合、佐渡市、関川村の2つが選定されております。
新潟県 佐渡市(第1回選定)
新潟県佐渡市は、以下の提案にて脱炭素先行地域に選ばれています。
離島地域におけるEMSを活用した自立分散・再生可能エネルギーシステム導入による持続可能な地域循環共生圏の構築 離島特有のエネルギーの災害脆弱性等を踏まえ、佐渡市全域におけるにおける官民の防災・観光・教育施設(125施設)について、屋上等を活用した太陽光や蓄電池、耕作放棄地等を活用したオフサイトの太陽光、木質バイオマス発電、10地区の主要防 災拠点に大型蓄電池を導入するとともに、EMSによる一元管理等を行い脱炭素化を図る。また、公用車・レンタカーEV化、グリーン スローモビリティによる地域交通シェアリングサービス、再エネ100%EVステーションの導入等を行う。 |
この提案によって、
① 自家消費型太陽光発電7,313kW (101施設合計)・蓄電池、耕作放棄地等を活用したオフサイト太陽光発 電2,000kW、バイオマス発電380kW を導入
② 市全域に分布する需要家全体の防災機能の向上を図るため、旧市町村単位に立地する市役所・支所・サービスセンターを対象に10地区で大型蓄電池 (1MWクラス)を導入するとともに、防災関連施設や教育施設にも蓄電池を導入
③ 公用車を対象に9年間で25台をEV化するとともに、道の駅「あいぽーと佐渡」において再エネ100%のEVステーションを整備し、レンタカー事業者や宿泊施設を対象にEVやEV充放電設備の導入を支援
などの取り組みが予定されております。
新潟県 関川村(第2回選定)
同じく新潟県の関川村でも脱炭素先行地域に選定されました。
取り組みの全体像は以下のようになっています。
村の主要施設が集積している村中心部を対象に、太陽光、小型風力、地熱(温泉熱)、木質バイオマスといった多様な再エネ電源を導入して、自営線と大型 蓄電池を活用した地域マイクログリッドを構築し、レジリエンスの強化を図るとともに、再エネを活用した融雪設備を導入して、豪雪地帯における生活の利便性向上を図る。木質バイオマス発電に村内材を活用するとともに、森林資源の計画的管理、スマート林業の導入等により、林業全体の経営健全化を図る。また、耕作放 棄地の再生利用とソーラーシェアリングの導入により、農業を活性化。 |
この提案によって具体的には、次のような展開になります。
① 村中心部の住宅や公共施設等に太陽光発電(1,931kW)・蓄電池を導入し、自家消費を推進
② 村内の遊休地に太陽光発電(200kW)を導入するとともに、小型風力発電(69kW)・地熱バイナリー発電(4kW)・木質バイオマス発電 (294kW)といった多様な再エネを導入し、新設する地域新電力を介して 再エネ電力を供給
③ 防災拠点である村役場、村民会館、道の駅等において、自営線と連系した地域マイクログリッドを構築するとともに、大型蓄電池を導入し、地域新電力がエネルギーマネジメントを実施
④ 村役場、村民会館に再エネ電気で稼働する融雪設備を導入するとともに、 温浴施設の排熱を駐車場の融雪に活用
環境省は、脱炭素先行地域を100まで増やすことを掲げており、ますます、地方公共団体の脱炭素が加速化していきます。