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Demand Response(デマンドレスポンス)とは、エネルギーリソースを制御することで、電力需要パターンを変化させることです。
本日は、なぜDRが注目されているのか、また具体的にDRを行う方法について解説します。
1.【背景】スポット市場の高騰
昨今のロシア・ウクライナ情勢やコロナ禍の需給バランスの変化により、日本のスポット市場の価格は下記のグラフのように昨年に比べて大きく上昇しています。
スポット市場の価格が上昇し、小売電気事業者は調達コストが上がっている状況にあります。
2.【背景】今夏の厳しい電力需給
どれくらい電力需給がひっ迫するかを予想するのに、「供給予備率」が使われています。
「供給予備率」とは、「電力需要」のピークに対して、どれくらいの「電力供給」があるか示したものです。
ここでの「電力需要」は、供給計画をベースに夏季において過去10年間で最も厳気象(猛暑)であった年度並みの気象条件での最大電力需要(厳気象H1需要)を一般送配電事業者が想定したものとし、
「電力供給」は、小売電気事業者および発電事業者が保有する供給力と、一般送配電事業者の供給力(調整力、離島供給力)を合計したものに、電源Ⅰ´及び火力増出力分を加えた量とします。
2022年6月末に算出された、「厳気象H1需要に対する予備率」は以下の通りです。
<2022年7月>
北海道 21.4%
沖縄 28.2%
その他エリア 3.7%
<2022年8月>
北海道 12.5%
沖縄 22.3%
その他エリア 5.7%
最低ラインの3%を満たしていますが、これまでにないほど需給状況は予断を許さない状況です。
3.DRの種類
冒頭の通り、DRとはエネルギーリソースを制御することで、電力需要パターンを変化させることです。
DRの種類は2つあります。
電気料金型DR | ピーク時に電気料金を値上げすることで、各家庭や事業者に電力需要の抑制を促す仕組み メリット:比較的簡便であり、大多数に適用可 |
インセンティブ型DR (ネガワット取引) | 電力会社との間であらかじめピーク時などに節電する契約を結んだ上で、電力会社からの依頼に応じて節電した場合に対価を得る仕組み メリット:契約によるため、効果が確実 |
これより後は、現在注目されているインセンティブ型DRについて説明していきます。
インセンティブ型DRは以下の手順で行われます。
① 電力会社は需給ひっ迫を予測する。
② 電力会社はアグリゲーターへ節電要請を行う。
③ アグリゲーターは需要家ごとに節電量を設定する。
④ アグリゲーターは各需要家へ節電要請を行う。
⑤ 各需要家は節電を実施する。
⑥ アグリゲーターは各需要家へネガワットの対価として報酬を支払う。
⑦ アグリゲーターは各需要家との間でネガワットと報酬を集約管理する。
⑧ 電力会社は需給逼迫を回避し、アグリゲーターへネガワットの対価として報酬を支払う。
4.下げDRと上げDR
DRの発動により電気の需要量を減らすことを「下げDR」、
電気の需要量を増やすことを「上げDR」といいます。
下げDR | DR発動により電気の需要量を減らす。 例)電気のピーク需要のタイミングで需要機器の出力を落とす |
上げDR | DR発動により電気の需要量を増やす。 例)再生可能エネルギーの過剰出力分を需要機器の稼働により消費したり、蓄電池を充電することにより吸収したりする |
DRについては、平時の需要量(ベースライン)から、上げDRもしくは下げDRを実施した後の需要量を引いたものを評価します。
2022年現在特に注目されているのが、電気の需要量を減らす手法である「下げDR」です。
5.下げDRの手法
下げDRに活用しやすい設備は以下です。
● 空調
● 照明(LEDなど)
● 生産設備(電気溶解度、セメント攪拌機・粉砕機、ティッシュロール製造機、プラスチック押出成形機、電解槽)
● 自家発電設備
● 蓄電池(特に非常用電源用途で導入したもの)
● 蓄熱槽
● 電気自動車
下げDRは以下の方法で行います。
● 調整・停止(空調・照明・生産設備など)による電力需要の抑制
● 放電(蓄電池など)による、その時間帯における電力会社からの電力供給の抑制
● 生産計画の変更による電力需要の抑制(変更分は夜間にシフトなど)
6.下げDRのメリット
下げDRのメリットは、電力ピーク時の消費電力量を抑えることができることです。
小売電気事業者にとっては、ピーク時にコストの高い電源で焚き増しを行わずにすむ(高い電力を仕入れなくてすむ)ため、コストが押さえられます。
需要家としても、節電することに対して経済的なメリットを受けられます。
7.デマンドレスポンスが2022年注目される理由
特に2022年夏、LNGスポット市場価格が高騰する中、下げDRを活用することで、スポット市場からの追加購入量を削減することができ、そのコストを抑制することができます。
また、今夏の厳しい電力需給の見通しが示される中、下げDRにより、 供給力の確保に備えることができ、需給の改善にもつながります。
電力コストの抑制や需給改善につながる社会的に意義のあるDRについて、引き続き注目しましょう!