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小規模事業用電気工作物区分が新設
2022年6月、第208回通常国会にて電気事業法の改正が成立し、2023年3月20日より施行されることが決まりました。
これまでの制度では小出力発電設備(太陽電池発電設備(50kW未満)、風力発電設備(20kW 未満))については、「一般用電気工作物」として取扱い、一部の保安規制は対象外とされていました。
今回の改正によって太陽光発電設備・風力発電設備を分類する区分として新たに「小規模事業用電気工作物」が新設されます。
小規模事業用電気工作物に該当する条件は以下のようになっております。
項目 | 該当条件 |
規模 | 太陽光:10kW以上~50kW未満 風力:20kW未満 |
新設/既設 | いずれも |
地上設置/屋根上設置 | いずれも |
FIT認定あり/なし | いずれも |
今回の改正による変更点は主に3つございます。
①技術基準適合維持義務の対象が拡大
②基礎情報届出が新設され義務化
③使用前自己確認の対象が拡大され義務化
引用:令和4年度小出力発電設備等保安力向上総合支援事業 (小出力発電設備の保安人材育成等事業
①技術基準適合維持義務の対象が拡大
これまで行われていた技術基準適合維持義務の対象が拡大され、小規模事業用電気工作物(太陽電池:10kW 以上50kW 未満、風力:20kW 未満)も、技術基準適合維持義務の対象となります。
事業用電気工作物の場合、「保安規定の策定」や「主任技術者の専任」の届出を行うことによって技術基準に適合・維持できているとみなされます。
一方で、小規模事業用電気工作物の場合、これらの届出は必要ありませんが、発電所に関する基礎情報の届出が必要となります。
基礎情報の中身については次の項でご説明いたします。
②基礎情報届出が新設され義務化
通常の事業用電気工作物に係る規制に関しては以下のようになっていました。
保安規程 | 電気工作物の工事、維持、運用に係る ■組織体制 ■巡視・点検・検査 ■計画・改善 ■災害等の非常時の対応等 ※その他、保安教育、文書管理等も規定 |
主任技術者 | ■電気工作物の工事、維持、運用に関する保安の監督 |
今回の改正によって、基礎情報届出の制度が新設され、上記に代替する形で小規模事業用工作物は基礎情報の届出が必要となりました。
基礎情報届出の届出事項の例は以下のようになっております。
参考:経済産業省
(1)設備や設置者に係る基本的情報 | |
設置者 | 事業者名 |
代表者名 | |
事業者の住所 | |
電話番号、電子メールアドレス | |
設備 | 電気工作物の名称 |
電気工作物の種類、出力規模 | |
電気工作物の所在地(住所) | |
(2)保安体制に係る情報 | |
保安体制 | 保安管理担当者名 (保守管理業務の受託者含む) |
点検頻度 ※業界団体が推奨する点検頻度に基づく場合にはチェックのみ |
参考:経済産業省
今回の改正によって、現在60万件以上設置されている既設の再エネ発電設備が技術基準適合維持義務と基礎情報の届出が必要になります。
しかしFIT認定を取得している設備に関しては届出が必要でない場合もあります。
設備の使用状況やFITを活用しているかどうかで必要な対応が変化します。
① 施行(2023年3月20日)以降に使用を開始する設備
使用開始前 | 基礎情報の届出が必要 |
変更時 | 以下の変更の際は届出が必要 ・基礎情報に変更があるとき ・小規模事業用電気工作物に該当しなくなるとき |
② 既設・FIT活用設備
施行時 | 基礎情報の届出は不要 |
変更時 | 以下の変更の際は届出が必要 ・基礎情報に変更があるとき ・小規模事業用電気工作物に該当しなくなるとき |
③ 既設・FIT活用なし設備
施行時 | 施行から6か月以内に基礎情報の提出が必要 |
変更時 | 以下の変更の際は届出が必要 ・基礎情報に変更があるとき ・小規模事業用電気工作物に該当しなくなるとき |
③使用前自己確認の対象が拡大され義務化
使用前自己確認とは太陽光発電設備を稼働させる場合、国が定めたルールに沿って安全を確認する作業のことです。
太陽光発電設備等の再エネの普及に伴い、粗悪な業者によるパネルの設置が目立つようになり、自然災害等によるパネルの破損などの被害が増えるようになりました。
太陽光発電設備等の事故や被害を減らすために使用前自己確認が必要となりました。
今回の改正によって、使用前自己確認の対象が拡大され、一部の事業用電気工作物(太陽電池:500~2,000kW未満、風力:20~500kW未満)に加え、一部の事業用電気工作物及び小規模事業用電気工作物(太陽電池:10~500kW未満、風力:20kW未満)も、使用前自己確認が義務となりました。
基本的には既設の設備は届出の対象外となっています。
しかし以下のようなパネルの増設、基礎や架台の取り換えのような一定の変化の工事が行われた場合、使用前自己確認の届出が必要になります。
太陽光 | ・10kW以上の増設または支持物を含む取替えで、合計出力が2,000kW未満の設備 ・10kWかつ出力5%以上の太陽電池パネルのみの取替えで、合計出力が2,000kW未満の設備 ・20%以上の電圧の変更で、合計出力が10kW以上2,000kW未満の設備 ・支持物の強度の変更で、合計出力が10kW以上2,000kW未満の設備 ・支持物の強度に影響のある修理で、合計出力が10kW以上2,000kW未満の設備 |
風力 | ・発電設備の増設で、合計出力が500kW未満の設備 ・発電設備の取替えで、合計出力が500kW未満の設備 ・回転速度の変更または5%以上の出力の変更で、合計出力が500kW未満の設備 ・風車・支持物の強度の変更で、合計出力が500kW未満の設備 ・調速装置・非常調速装置の種類の変更で、合計出力が500kW未満の設備 ・風車・支持物の強度に影響のある修理で、合計出力が500kW未満の設備 ・調速装置・非常調速装置の取替えで、合計出力が500kW未満の設備 |
今回の改正で届出等の対応を行わない場合、太陽光発電の運用を行えないどころか、罰則も定められております。
届出は郵送やオンライン申請などで行うことができます。
使用前自己確認の様式や記入例、提出の際の注意事項に関しては経済産業省のページで解説しています。
ご自身の太陽光発電設備が届出を必要としているのか今一度確認しましょう。
ご不明点等ございましたら下記よりお問い合わせください。
https://www.sc-energy.com/contact
参考:経済産業省